年間約500冊の漫画を購入する生活を20年以上続ける“マンガマニア”で、“マンガ大賞”の発起人でもあるニッポン放送アナウンサー吉田尚記が毎週1冊オススメの漫画を紹介する「講談社presents 吉田尚記のコミパラ!」
年間約500冊の漫画を購入する生活を20年以上続ける“マンガマニア”で、“マンガ大賞”の発起人でもあるニッポン放送アナウンサー吉田尚記が毎週1冊オススメの漫画を紹介する「講談社presents 吉田尚記のコミパラ!」
第17回目にご紹介したのは、月刊少年マガジンにて、好評連載中の天才軍師・張良を主役に据えた“項羽と劉邦”の戦いを描いた中国史漫画「龍帥の翼 史記・留侯世家異伝」(著:川原正敏)。
“マンガ大賞”の発起人として、様々な漫画好きの方と連絡を取り合っているという吉田アナウンサー。そんな吉田アナウンサーの独自調査の結果、最近、ブームになりつつある漫画のジャンルがあるようで――。
吉田:最近、“中国”が来てんじゃないかと!
里崎:ほぉ!
吉田:僕、個人的に勝手に思ってまして。今、例えば、新聞社の広告が全部、
三国志のパロディとかだったりするやつが出てきてたりとか、
あと、『キングダム』って漫画がメチャクチャ流行ってたり――
里崎:あぁ、そうですね!
吉田:ご存知ですか!あれが、何が新しかったかというと、中国の歴史って1回、
男子ハマりません? みんな。
里崎:三国志とかね。
吉田:そうそう!そうなんですよ!三国志とか大好きになって、五虎将軍の名前を言えるか
みたいなのを言い始める。だから、一番初めに横山光輝さんが『三国志』を漫画界に
投入する。これ、わかる!で、その後、『キングダム』って日本人がほとんど馴染みの
なかった春秋戦国時代の漫画が本当に好きな人がたくさん現れて、もう壮大なスケール、
男たちの戦い!みたいなので、ドーンってなって、今もう、秦の始皇帝が出来るまでの
物語がずっと描かれているんですけど。そこまで来たら、まだ他にも、中国の歴史には、
凄いところがいっぱいあるんじゃないかという最先端の漫画が最近、始まりました。
里崎:おぉ!何すか?
吉田:これがですね、今日、紹介する月刊少年マガジンに連載中の『龍帥の翼 史記・留侯世家異伝』!
もう漢字多いでしょ?(笑)
里崎:これ、あれっすね!『修羅の門』に絵が似てますね。
吉田:流石~!マガジン派!
里崎:はっはっはっはー(笑)
吉田:マガジン派の里崎さんらしい。そうなんですよ。『修羅の門』とかを描いていた
川原正敏さんです。
里崎:おぉー!
吉田:川原正敏さんって、男たちの戦いを、濃過ぎずに描くのが凄く上手い作家さんなんですけど。
どうも川原さんは、昔から中国史モノ描きたかったらしいんですよ。
でも、中国史モノで三国志はある。いっぱいある。
それこそバリエーションもいっぱいありますよ、三国志とかだと。で、もう春秋戦国も
大ヒットがあったと――いうところで、何の物語を最近、描き始めたかというと、
これ、項羽と劉邦の時代。つまり、秦の始皇帝が倒れた後に、大漢帝国を創る項羽と劉邦の
戦い。劉邦の方がなる訳ですけど。その劉邦の物語を描いているんだけど、焦点が
当たっているのが、その劉邦陣営の軍師だった張良なんですよ。
里崎:おぉー!
川原正敏先生といえば、これまでにも『修羅の門』や『海皇紀』、『修羅の刻』、『修羅の門 第弐門』など、数々の代表作を世に送り出してきたベテランの漫画家である。そんな川原先生が次に題材として選んだのが、中国史モノ。中でも、項羽と劉邦の時代だった――。
吉田:元々ね、歴史上でいうと、司馬遷って出てくるじゃないですか?
中国で最もデカい歴史書(を書いた)と言われる。
この、今言った『龍帥の翼』は、“龍”の“龍”に、“総帥”とかの“帥”ですね。
『龍帥の翼 史記――』、これは、“歴史”の“史”に“記”すと書いて“史記”。
で、『留侯世家』で、この“留侯”っていうのは、どうもこの張良のことらしいんですけど、
主人公の張良子房!張良子房の異伝。“異”なって“伝”える。で、最後の異伝って部分が
漫画なりの解釈がいっぱい入っているってやつなんですけど。これが、今までに
全然知らなかった物語を初めてスーッと入って来るという面白さが凄いあって――
里崎:確かに、ちょっと僕も歴史背景はちょっと分かんないっすね。
吉田:そうですよね? 日本人がほとんど馴染みのなかったところを
分かりやすく、それこそ、司馬遼太郎以来、項羽と劉邦モノで
大ヒットした創作物とかって日本で多分ないと思うんですよね。
それを漫画の今の技術を使って、こう入れ込み始めているんですけど、こういうのって
昔過ぎる資料なので、何種類も確実に違う説が残っているんですよ。
里崎:諸説あります、みたいなやつですね。
吉田:そうです!諸説ある内の複数の物を取り上げて、
一つの世界観として漫画として、ストーリーとして
読ませてくれるっていうのは、もちろん勉強になって楽しいんですけど。
これをやってることによって、僕、何かが起きる感じがしてます。
何かというと、『龍帥の翼 史記・留侯世家異伝』の他にですね、
幕末モノなんですけど、『風雲児たち』って漫画があるんですね。みなもと太郎さん
っていう漫画家さんが描いた。『風雲児たち』って凄い色んな資料をあたって、
みなもと太郎さんが描いている内に、どうも今まで言われていた学説と違うんじゃないか?
っていうことをみなもと太郎さんは思いついちゃってるんですよ。
漫画だからって理由で大胆な仮説としてそのまま漫画にしちゃったんですね。そしたら、
みなもと太郎さんが漫画に描いたあとで、歴史研究が進んで、みなもと説の方が今までの
説より正しいって証明されたことがある!
里崎:あっはっはっは(笑)
吉田:これ、ホント、そうなんですよ!これ、実は、ジョン万次郎が地元に
帰ってないんじゃないか、って歴史上言われてたのが、本当は帰ってたっていうのが
分かったっていうのは、あるんですけど。どうも、これに関しても漫画を描くっていうのは、
凄い作業でちゃんとストーリーの辻褄があってないといけないじゃないですか。
しかも、絵に起こさなきゃいけないから、資料も凄い少ないらしいんですね。
説明によると。その資料で、想像で漫画家さんが埋めてくじゃないですか。そうすると、
あとから研究が進んで、「これは、本当にそうだったんじゃないか!?」っていうことが
既に起きそうな雰囲気でいっぱいなんですよ。まだ、3巻までしか出てないかな。
っていう状態なんですよ。
漫画家の取材力や想像力、ストーリーを描き出す力が、時に学者の研究を超えることがある。
そして、吉田アナウンサーは、川原正敏先生の『龍帥の翼 史記・留侯世家異伝』にもその雰囲気が漂っていると熱く語る――。
里崎:やっぱり、漫画家さんの取材とか勉強努力は、やっぱ凄いっすね!
吉田:そうなんですよ。しかも、学者さんと違って、検証するだけじゃなくて、形にするから、
そこでもう一個負荷が掛かって、新しい学説を見つけ出す可能性が凄い高いんじゃないかと。
先ほど言った中国のスケールのデカい物語を楽しみながら、もしかしたら本格的な人を
漫画家さんの方が凌駕する瞬間が出るんじゃないか。これが出来そうなのが、
川原正敏さんって元々、『海皇紀』とか船のファンタジー世界の漫画とか描くと45巻とか
物凄い長いのを描くタイプの方なんで、『修羅の門』とかも凄い長い――
里崎:長い!
吉田;川原正敏さんが新しいシリーズをスタートさせたことがもう事件だと思うんですよ。
恐らく、下手すると100巻クラスの作品になる可能性が――
里崎:あっはっは(笑)長いな、道のり!
吉田:乗るなら今です!
里崎:確かにね!
天才軍師・張良を主役に据えた“項羽と劉邦”の戦いを描いた中国史漫画「龍帥の翼 史記・留侯世家異伝」(著:川原正敏)。
史実を覆す超大作になる予感が漂う作品となっている。
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吉田尚記のコミパラ! | ニッポン放送 | 2017年1月27日(金)