今年は、3月に世界トップレベルの棋士として有名なイ・セドル九段が、ディープマインド社が開発した人工知能「アルファ碁(AlphaGo)」に敗戦を付すという歴史的なことから始まるなど、ディープラーニング・深層学習やニューラルネットワークが急速な進歩を続けています。
そんな最先端のIT分野でさまざまな実績を他社に先駆けて生み出している方のひとり、株式会社UEI代表取締役社長兼CEOで人工知能開発の第一人者・清水亮氏が11月に「よくわかる人工知能 最先端の人だけが知っているディープラーニングのひみつ」(KADOKAWA)という本を出版されました。そこでこれを機会にアナウンサー・吉田尚記が人工知能の真髄に迫るインタビューを敢行!!
「人工知能のことをガチで天才プログラマー/スーパークリエイター清水亮に聞く」
その1:人工知能を使いこなせる人と使いこなせない人の差がこれから数万倍に広がる!?
その2:人間に出来ないことはAIにも出来ない!? そんなAIを手なづけられる人は誰なのか!?
清水亮プロフィール
株式会社UEI代表取締役社長兼CEO。株式会社ドワンゴ会長室第三課長を兼務。深層学習を中心とした人工知能の研究開発を専門とし、自らプログラミングも行う。2005年、情報処理推進機構より天才プログラマー/スーパークリエイターとして認定される。
■ユーチューバーが多分一番これからの時代に生き残っていきやすい!?
吉田:AIには、そういった信頼性を保つのと、さきほどの「使いこなせる人」と「使いこなせない人」との差が大きく開くかどうかについて、我々は、心がけていれば行けるのか・・・何もしないと本当にまずいところに行ってしまうのか・・・流されるとしたら、今何をしておけばいいのか・・・
清水:ぼくはあんまり人の不安を煽るようなことはやりたくないんです。流されちゃったからって別に死ぬわけではないし・・・。
吉田:それはそうですね。あまりにも貧困層が多い国って富裕層にとっても住みづらい国になるとか言いますね・・・。
清水:まあその、ベーシックインカムとかになっていくんでしょうね。人間がやるろくでもない仕事はどんどんなくなりますよね。できればやりたくないけどギャラは高いという仕事はどんどんAIやロボットに変わりますね。
吉田:いわゆる3Kと呼ばれる仕事ってどんどんAIに取って代わっていく・・・
清水:わざわざそんな仕事したくないと思う若者も増えるじゃないですか。そうすると自動的にそれはそういうふうな感じで減っていくんだと思うんです。
吉田:それって全体としては良いことですよね。
清水:社会全体としては良いことですよね。ただそのかわり逆に言うと、「何でもいいから働きなさいよ」ってお母さんからせっつかれていたニートの方々は完全に働く場所がなくなります。
吉田:いままでだと、僕はニート的な人の気持はすごくわかるので、それに対する最大の処方箋はなんでもいいからとりあえず働くことなんです。
清水:そうです。ただおそらく逆にいうと、いまちょっと会社で働いてますって調子こいてる人たちが、今後ニートと同じになるとも言えるんです。今って、結局、ためにつくる中間職、中間管理職、ためにする仕事がいっぱいあるんで、経営者だったら誰しもがそんな仕事はなくしたいと思っているから、ムダを省くと結果的にみんな仕事がなくなり、給料もなくなるという結論に達するので、だったらベーシックインカムだけで暮らせる範囲で暮らせればいいというのが、既定路線かなって僕は思っているんです。
吉田:やりたいことがある人は、いろんな教養の一つとしてAIプログラミングをやると・・・。
清水:そこの貧富の差というか、行動力の差は、いまだと日本国内だと、最低賃金が都内で年収200万円くらいが背景にあります。例えば200万円の人がいるとしましょう。日本は相当平和な国だと思うんですよ。何故かと言うと相当儲かっている会社の社長でも年収1億とかなんですよ。これが外資系の会社やアメリカになると、何10億に変わっちゃうから、アメリカでは年収200万と50億の人が共同生活する世界なんです。
日本は総理大臣だってせいぜい年収6000万円くらいでしょ? いろいろ機密費とかで使えるお金はあるかもしれないけど、本人が自分の生活だけに使えるお金は、そんなに大きな差はないのが日本。せいぜい100倍。年収1000万円超えている人が人口の2%くらいだとすると、その差っていうのが、だから年収の0.1%の人と残り99.9%の人みたいな話でわかれていく。大半はニートで、ごくごく僅かな酔狂な人が人工知能を使った仕事をしていて、他の人達にとっては仕事はすでにレジャーになるんですよ。
吉田:そうですね。
清水:だから僕は、ユーチューバーが多分一番これからの時代に生き残っていきやすいと思っている。あれはあれでつらそうですけどね笑。ただ別にベーシックインカムがあったらあれでいいじゃないですか。
吉田:自分で興味があることだけつぎつぎやっていく・・・。
清水:いままでは、真面目で勤勉が重要だった・・・。
吉田:そういう展開なんだ!!!
清水:そうです。なんでかというと、ロボットがいなかったから・・・。
吉田:ロボットがいると真面目で勤勉の意味がなくなる・・・。
清水:そうそう。だってロボットのほうがずっと真面目で勤勉なんだから笑。
吉田:なるほど!!そう考えればいいんですね!! まじめな人ばっかりの世界になりましたよって考えるわけだ・・・。
清水:そうです。真面目なロボットたちが活躍する世界・・・だから漁船とかも全部ロボットたちが働く。ロボット漁船がバァ~ってベーリング海行って蟹獲って帰ってくる笑。
吉田:獲りすぎって出たら今日は漁獲高7割にして帰ってくるとか笑。
清水:そうです、隣の国のAIと戦いながら交渉して、ちょっと獲りすぎました、何匹かお返ししますみたいな笑・・・。
吉田:まじめな人がめちゃめちゃ増えた世界で、だから風呂掃除しておいてとかいうと、家の中のAIが全部真面目にやっておいてくれる・・・。だったら人たちの余暇はどうするのって話になるわけですね・・・。
清水:これあまり公然と指摘すると、フェミニズムとかで怒られるのであれなんだけど、どう考えても僕の祖母の世代よりも今の主婦って圧倒的に暇なはずなんです。
吉田:そうでしょうね・・・。
清水:実際、高度成長期で専業主婦が圧倒的に増え、専業主婦の手間がどんどん減ったためカルチャースクールが生まれたんですよ。カルチャースクールに通う余裕がある人がたくさんいる!!。
吉田:その昔は貴族とかしかできなかったことです。
清水:そうそう、家庭教師つけて勉強するとか・・・あれって主婦なんですよ、それがみんなが目指している世界(ライフスタイル)、一億総専業主婦(主夫)社会ですよ笑!!
■ベーシックインカムだけで人生に没頭する傍らにAIロボットが風呂掃除・・・
吉田:専業主婦でBlog書いて人気者になる人もいっぱいいますね、主婦ユーチューバーとかも・・・。
清水:だからこれからは(みんなから)「愛される」ということが重要になります!!
吉田:ユーチューバーはみんなに愛されているからああなんだ笑・・・。
清水:そうです笑。
吉田:彼らは愛される努力はしていますよね。
清水:いまのユーチューバーはものすごく先鋭化されているから、こういうことをすれば僕を愛してもらえるとか、私を認めてもらえるとか、そういう欲求が必ずある。それが「職場」ではなくなる可能性がすごくあると思うんです。
吉田:なるほど、だと職場って何ってことになります?
清水:職場って嫌でしょ?運の要素が強すぎる!! あなたもぼくも相当恵まれているから嫌な職場の経験がないかもしれないけど、世の中には嫌な職場だらけ・・・。
吉田:職場というよりも、なにかを一緒に実現しなければならないチーム内の人間関係ですよね。職場そのものが嫌なわけじゃない・・・。
清水:職場全体が嫌な感じの人間関係ってのもありますよ笑・・・。
吉田:つまりそんな人間関係から自由になれるってことですかね?
清水:そうそう、だから会いたい人としか会わなくて済むようになるとか・・・。
吉田:嫌な人格の人たちが淘汰されていくとか・・・。
清水:淘汰されるかどうかはわからないけど、みんなが幸せになれる可能性が高くなるというか・・・。ただ一方僕は、休日がすごく苦手で、僕は淘汰される側のような気がしていて笑・・・。
吉田:なぜです?
清水:休日に何もしたくなくなっちゃうんですよ。早く月曜日来ないかなと思っちゃう。みんな休んでるのでオレ一人で会社行ってもつまんないし・・・。
吉田:週末はプログラミングしてたりしてるじゃないですか笑・・・。
清水:あれは会社に行かない代わりに家でプログラミングしているんですよ笑。だから行かなくても一緒笑。
吉田:でも会社のプロジェクトとは別のことなんですよね・・・ディープラーニングとかもそんなところから見つけたんじゃないんですか?
清水:まあそうですね・・・。一応仕事ではあったんですが、結局僕が普通に土日休む人だったらそんなに深くはまらなかったかもしれませんね。
吉田:僕は逆に、仕事とプライベートを分ける理由が全然わからなくて、現状もこれ仕事ですけど、仕事かぁ?って思います。今一番興味あることが聞けるのって仕事の前に好奇心・・・
清水:それは我々が相当恵まれているからなんですよ。でも(AI化が進むことで)こういう働き方ができる人たちが増える可能性があるということです。
吉田:そうですね。
清水:それは「働く」という言葉じゃなくなるかもしれない。カルチャースクール行くことは仕事じゃないじゃないですか。逆に働くという言葉が強いから、働いてなくても働くということばを名乗る人が増えるのかもしれない・・・。
吉田:実は僕はいま本を書いているんですが、テーマが「没頭力」なんです。まさにいま言っていた「新しい働く」ことっておそらく「没頭する」ってことだと思ったんです。没頭している時間が長い人に少なくとも生活のくいぶちがある世界って、いまの日本はすでに実現していると思うんです。現段階でも、例えば異常にすごい草履を作り続けている人がいたとき、食えるくらいのインカムはあると思うんです。
清水:欲をかかなかったら、幸せに暮らせる時代はいまでも到来していますね。
吉田:それがよりまじめに風呂掃除とかしてくれるAIロボットがバンバン登場してくると、さらにやりやすくなる笑。
清水:あと僕が思うに、社会全体が無欲になっていくと思うんです。
吉田:別に今の欲って、さっきの話で言えば、年収2億円稼いでる日本の社長がアメリカの社長は50億稼いでるからうらやましい、渡米しようみたいな話ですか?
清水:そう思わないと思うんですよ。例えば、ドラクエの中の金が何10億ゴールド持っていても別に羨ましくないのと同じで、俺が生きるのに困らない程度ならそんなにお金はいらないんですよ。生活の不安があるからお金が欲しいとなるだけで、生活の不安が全くなくなれば、お金に魅力はない・・・。だってお金が欲しい小学生とかいないでしょ笑、生活の不安がないからです。
吉田:そうか。人間の特徴って未来予測ができることなんだそうですが、笑う動物も人間だけ。なんでかというと、笑いは未来を予測したときに予測と違うことが起きるときなんですって。つまり予測がないところに笑いはないんだそうです。
清水:確かに!!
吉田:つまり人間の知能の本質は「予測」で、これが生活の不安を生み出している・・・。でも同時に去年と違う状態、例えば犬が去年と今年で違う状態してたら笑うじゃないですか笑。そろそろ俺もいい年になったから犬小屋を建てようって犬が思ったら笑う!!ドッグフード節約するので4年ローンで・・・なんてないわけですよ笑。
清水:面白いな・・・確かに・・・。
■AIは不安を感じず予測ができるがのが凄い・・・
清水:予測がなければ農耕はできないですからね・・・。
吉田:そういうのが人間の本質なんだとすると、そこに不安がなくなるように、人工知能も予測するんですけど、予測と裏腹の不安は持たない気がしますね・・・。
清水:持っていないですね。
吉田:人工知能が一番すごいのは、不安がないことではないか、ネガティブな発想による無駄な行動を起こさない!! 不安だから核兵器を持つという言い方もあると思うんです。
清水:そこに関して言えば、僕が思っているのは、AIが将来的に不安とか欲望とかを持たないかと言われたら、別に持つようにプログラムすることは簡単にできるとは思うんです。
吉田:持てたほうが効率的になることもあるかもしれない・・・。
清水:可能性としてはね。ただ、一番の良いポイントは、我々人間というのは、不安とか欲望を生化学的にコントロールができないこと。だから悩むわけだし、だから辛い思いをする。AIの場合はそれをコントロールできるんですよ。
吉田:不安機能が働いたらあんまりよくなくなっちゃった・・・。
清水:だから機能停止みたいな・・・。だからこの仕事にはどんな機能があったほうが良いのかっていうのをこっち側でコントロールでき、その上コピーもできるんだから、これでうまくいくんだったらこれで行こうとか、ちょっとダイバーシティ(多様性)持たせてちょっと違う考えのAIを入れてみようとか、僕らがコントロールしやすい、ある意味人権がないところが良いわけです。
吉田:もう全然飛びすぎているんであえてちょっと戻すと、わかりやすい「アルファ碁」の話・・・。世界最強の碁のAI。アルファ碁は一体何をモチベーションに強いんだ? 強くなったんだ? 強くなるまでの過程というのは、自分たちの中で何万回という対戦を繰り返してきた・・・。でもイ・セドルは世界一だってことがかっこいいと思っているし、そのために頑張ってもいた・・・。ではアルファ碁のモチベーションは何だったのか・・・・?
清水:モチベーションはないです。
吉田:(人工知能にモチベーションは)ないんですよ!!(続く)
さてこの続きはどんな話の展開になるんでしょう・・・次回最終回をお楽しみに!!
「よくわかる人工知能 ~ 最先端の人だけが知っているディープラーニングのひみつ」
2016/10/17発刊 KADOKAWA ASCII (1,836円)
https://www.amazon.co.jp/dp/4048922335
はじめての深層学習(ディープラーニング)プログラミング
2016/12/7発刊 技術評論社(2,462円)
https://www.amazon.co.jp/dp/4774185345
株式会社UEI
http://www.uei.co.jp/
秋葉原プログラミング教室・AIプログラミングコース
http://www.akiba-programming-school.com/