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本格雑談 くちをひらく

アナウンサー・吉田尚記と声優・中村繪里子の”雑談イベント”を開催!その名も 「本格雑談 くちをひらく」!とにかく口を開かずにはいられない二人が、ゲストを交えて、どこに向かうかわからない、どう転ぶかわからない、神変出没の本格雑談を繰り広げます!

イベントタイトル決定!「喜劇!留置所先生、逮捕しちゃったぞ物語!~他人のドラマを生きている~(ゲスト冲方丁)」

【「本格雑談 くちをひらく」第1回 ライブレポート⑦】

アナウンサー・吉田尚記と声優・中村繪里子。とにかく口を開かずにいられない、2人がゲストを交え本気の雑談をお送りするトークライブ「本格雑談 くちをひらく」第1回が先月開催されました。記念すべき初めてのゲストは作家・冲方丁!

アナウンサー、声優、作家の紡ぐ二転三転トークイベントの様子をお届けしています。

最終回となる今回は改めて、物語の作り方のお話・・・

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吉田:漫画「宇宙兄弟」の佐渡島庸平さんという編集者さんに、連載について聞いた時の話(※前回記事)なんですが。連載の物語って、次の回が気になるように、先は決めないで作ってるらしいんですよ。

冲方:漫画の連載の面白いところですね。以前、かわぐちかいじ先生に「沈黙の艦隊」は来週のことを考えずに描いてたって聞いたことがあります。

吉田:漫画の人はそうみたいですね。

中村:小説は違うんですか?

冲方:小説はパターンが分かれますね。ちゃんと先に決めて書く人もいるし、何も考えずに書く人もいる。でも考えないと言いながら、別のことは考えているんですよ。

中村:そうなんですね!

冲方:物語としての完成度ではなく、シーンとしての完成度を高めようとして書いている。整合性や意味合いではなく、瞬間を楽しませるという物語の作り方ですね。

吉田:佐渡島さんに聞いた話で、「宇宙兄弟」で、主人公の弟が、月のクレバスに落っこちる話を考えた時なんですが、もともとはすぐに戻ってくるストーリーにするつもりだったんですって。ただ、背景を描くアシスタントさんにクレバスを発注したら、凄いクレバスの絵を描いてきたらしいんです。

中村:クレバスを超えたクレバスのような。

吉田:それを見た佐渡島さんと、作者の小山宙哉さんが2人で「コレに落ちたら死ぬかもね」となって。「弟、死んでもいっか」となったんですって。

中村:リアルに考えた結果ね。

吉田:それで弟をクレバスに落としてから、もう1回、JAXAに取材に行ったそうです。設定を説明して、対策を聞いて、どうしたら生き残れるか。本当に生きて帰れるか、描いてる本人たちもわからないまま描いてたんだって。

中村:先に取材があって、ある程度の予測が立ったから落とそう、ではないんですね。

吉田:落ちてから考えたんだって。

中村:先に取材して欲しいなと、弟は思うでしょうけど(笑)

吉田:でもそうやって生き残って戻ってきた弟は、作中で英雄として描かれて人気者になるんです。それと同時に、漫画の「宇宙兄弟」も人気が爆発したそうです。

中村:なるほど~。

吉田:佐渡島さんは安野モヨコさんや、井上雄彦さんとかの担当もされている人なんですよ。そういう人たちが、どうやって作品を作ったかを、若くて才能のある人に伝えている。こうやって漫画は作るもんなんだよ、って。

中村:へぇ~!

吉田:そういう漫画の作り方を聞いて、すげえ!と思うんですけど、これってメッセージがどうとか考えて漫画作ってないですよね。

中村:この漫画でこういうことを伝えたい!というのではないですよね。

吉田:でも、それで読んだら読んだで、元気が出ちゃったりするから面白いよね。

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冲方:眼福という言葉があるように、人はものを見て、意味を発見して幸せになるんですね。例えば、マザー・テレサが貧乏な街に医療施設を建てるため、お金が必要になった時。ずっと街を見ているうちに、街にはヤシの実が落ちているのを発見する。その身をほぐして枕を作り、ヒット商品となったという話があるんですけど。

中村:すごい!

冲方:ある日、そこに既にあるものに、まったく違う姿、違う意味が浮かび上がってくるというのが、物語の本質の1つで、それは精神の新陳代謝でもあるわけです。人間は生きていくうえで、肉体的な新陳代謝があるから、いつもご飯を食べ続けなきゃいけないんですよね。でも、これだけの食料を作ればもう充分、とはならないんですよ。

中村:うんうん。

冲方:なぜかというと、人間は増え続けるから。人が増えれば、精神的な新陳代謝も必要になってくるんですよ。つまり、社会を成り立たせるための物語が必要になってくるんですね。あるいは、社会の中で、自分が生きる価値を見出すための物語が必要になる。

吉田:それは実体験でも本当は良いわけですよね?それをフィクションで読むというのは?

冲方:人間が実体験だけで得られるものには限界がありますから。

吉田:1日24時間しかないし。

冲方:その体験がどんな価値を持つか、という観点もあるし。

中村:冲方さんの実体験に、冲方さんが出版したものを通して触れることで、冲方さんの体験を共有できるわけですね。

冲方:それが物語の1つの役割でもありますね。発見した意味を伝達して、共有すること。この機能が発達して、人間は、動物とは違って未来の物語を作る能力を手に入れた。

中村:今までのことに意味付けするだけではなく。

冲方:いま努力していれば、3年後、高尾太夫に会えるんじゃないか、とか。2020年のオリンピックを目指す、とか。そういう時間の感覚による因果関係の延長をするようになったんですね。

吉田:時間の感覚。今はどうなっているんでしょう?

冲方:例えば、インドではいまだにカースト制というのがあって、生まれながらに職業が決まっているんですよ。でも、カーストの経典が書かれた時代にCGクリエイターやプログラマーという職業は無かった。

中村:無い無い!(笑)

冲方:だから誰がなっても良い職業として、インドでそういう人が急に増えたんです。そこで古い経典ではなく、新しい物語が生まれた。社会と個人の関係は常に変化し続けていて、変化自体が良かったか悪かったかという意味付けがまた、新しい物語を生む。その物語が生まれたことによって、また可能性が生まれ、また新しい物語が生まれていく。

吉田&中村:は~!なるほど!

吉田:じゃあ、もし今後、インドのプログラマーの物語とかできたら読んだ方が良いですね。

冲方:もう今いっぱいありますよ。USBを発明したのはアジア系の人達で、今ではコンピューター業界の英雄ですからね。

中村:すごーい!

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予定時間を大幅に延長して繰り広げられた『本格雑談 くちをひらく』。ゲスト退場後、会場に集まった皆さんから集めた「今日のイベント中で気になった単語」を短冊に描いて集め、ボードに貼り付け、トークマップを作成しました。

「物語の意味」、「辞書」、「マグロ」、「コイツがやりました」、「セブ島には女子大生がいる」、「ファミマ太夫」…散らかった雑談を表すかのように、とりとめのない単語が並んだ結果、今回のテーマは「喜劇!留置所先生、逮捕しちゃったぞ物語!~他人のドラマを生きている~(ゲスト冲方丁)」に決定。

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出演者、会場共に大盛り上がりのうちに終わった『本格雑談 くちをひらく』、第2回開催も期待されます。

<ゲスト 冲方丁さん最新刊>
冲方丁・著『こちら渋谷警察署留置場 冲方丁のこち留』2016年8月26日発売